通信制高校の体育祭で、胸が熱くなった日。14キャンパス6,000人が対面集結した、「ASU☆FES 2025」レポート!
年間約100の学校や教育現場を取材する「先生の学校」編集部が、今注目の学校や取り組みをリポートする新連載『「先生の学校」編集部が行く!となりの学校見学』がスタート!
第1回は、通信制高校「飛鳥未来高校グループ」の体育祭へ。首都圏14キャンパスが合同で開催する、6,000人規模の体育祭と聞き、取材に行ってきました!照明も映像も“本気”。目の前に広がっていたのは、眩しすぎるくらいの青春でした。
酒井勇樹さん/横浜関内キャンパス 教諭(取材当時) |写真中央
迫俊和さん/埼玉大宮キャンパス 教諭(取材当時)|写真左
代々木第一体育館に立ち上がった、6,000人の熱量
皆さん、こんにちは。「先生の学校」編集部のえみさんです。
ある日、SNSで流れてきたプレスリリースに目が留まり、私は思わず画面を二度見しました。

通信制高校で、14キャンパス合同、6,000人の体育祭?…正直、文字面だけでは全くイメージが湧かず、「どのように実現しているんだろう?」という疑問が先に立ったほど。これは現場を見ずにはいられない。そう思い、すぐに取材を申し込みました。
飛鳥未来高校グループは、学校法人三幸学園が運営する、全国に拠点を持つ単位制・広域通信制高校で、「飛鳥未来高等学校」「飛鳥未来きずな高等学校」「飛鳥未来きぼう高等学校」の3校で構成されています。同校の大きな特徴の1つが、行事の多さ。今回取材したASU☆FESは2015年から続く名物行事です。
11回目となる今回は初めて3校合同での開催となり、規模も過去最大の14キャンパス・約6,000人。さすがに1日で開催することは難しく、2日間にわたっての開催に切り替えたといいます。
会場である代々木体育館に足を踏み入れると、赤・青・緑・黄・ピンクの5色のチームカラーのTシャツや法被で会場が染まり、フロアでは照明がくるくると回る。さらにはドローンが飛び交い、まるでライブ会場のような熱気に圧倒されました。私がイメージしていた「通信制高校の体育祭」からは、全く想像していなかった光景でした。

通信制高校には、学び方も登校頻度も、そして抱えてきた背景も異なる生徒たちが集まっています。1,000人以上が参加するオンラインの体育祭の話は聞いたことがありましたが、会場を見渡す中で、「自分は一人じゃない」を体感できる対面の場の価値は、やはり大きいのだと感じました。ASU☆FESには、“安心”が熱量となって立ち上がっているような空気があったのです。
今回のASU☆FESの統括責任者であり、11年間ASU☆FESの運営に携わる横浜関内キャンパス長・佐々木康人さんは、こう話してくれました。
飛鳥未来高校グループには、首都圏だけで約6,000人の生徒がいます。生徒が『同級生がこんなにいるんだ』と実感し、安心できる。その感覚自体に、教育的な意味があると思っています。
通信制には、劣等感を抱えたまま入学してくる子も少なくありません。だからこそ、施設や行事の規模によって、『通信制だから仕方ないよね』と感じたり、全日制を見て羨ましく思ったりするような経験は、させたくなかった。舞台に立つことで、自己肯定感は必ず上がる。そう信じています。
キャンパスを越境した混成チームで行うパフォーマンス
競技はキャンパスをまたがった混成チームで実施され、パフォーマンスや巨大な横断幕の装飾はキャンパス対抗。「競技・パフォーマンス・装飾」の3部門で評価され、総合優勝が決まる仕組みです。
団長・副団長を中心にした団幹部パフォーマンスも力強くてカッコよく、台風の目や綱引き、高校生クイズなど、運動が得意ではない生徒も参加できるよう工夫された競技内容はどれも大盛り上がりでした!

この“混成チーム”という仕組みが、離れたキャンパス間の交流を自然に生み出しているようでした。統括メンバーの中心人物であった横浜関内キャンパスの酒井勇樹さんは、こう振り返ります。
混成チームになることで、生徒同士はもちろん、教員同士のコミュニケーションも一気に増えました。学校やキャンパスの枠を超えて、同じ目標に向かう感覚が生まれたと思います。

中でも圧巻だったのが、キャンパス対抗の団パフォーマンスでした。5分間の持ち時間に、各キャンパスが創造性を凝らしたパフォーマンスを披露。ダンスが得意な生徒を中心に、照明の当て方まで自分たちで考えたということで、プロのショーを見ているようでした。でも生徒たちのASU☆FESに向けた準備期間は約1カ月半だと聞き、さらに驚きました。
各キャンパスで練習や準備が進められ、オンラインで作戦会議を重ねながら、内容を形にしていったそうで、日頃はなかなか登校しない生徒が、練習のために学校へ足を運ぶ姿もあったとか。物理的な距離や一人ひとりの状況を超えて、同じ目標に向かう仲間とつながる、大切な時間になっていたのだろうと感じました。

“スポットライトを浴びる経験”と“それぞれがチャレンジできる場所”を届けたい。
1日ASU☆FESに参加させていただき、私が特に感銘を受けたのは、照明や音響、映像演出のクオリティの高さでした。エンディングで流れたダイジェスト映像には、生徒たち一人ひとりが「今の自分のベスト」を尽くす真剣な表情が次々と映し出され、胸にくるものがあり思わず涙ぐんでしまいました。
聞けば、プロの照明会社や映像制作会社が入り、事前に綿密な打ち合わせを重ねているそうです。なぜ、ここまで照明や映像にこだわるのでしょうか。
生徒たちにとって、照明が当たる経験そのものが貴重なんです。会場にいる生徒の5〜7割は、中学校で不登校を経験したり、何かしらの事情で転校してきた生徒たち。行事に参加したことがない、人前に立ったことがない、ましてやスポットライトを浴びる経験など、これまでほとんどなかったかもしれません。
だからこそ、“本物の経験”を届けたい。スポットライトを浴びながら、自分たちは特別な存在なんだと実感してほしいと思っています。

壁面を彩る巨大な横断幕も、強い存在感を放っていました。制作を担った装飾班には、運動や表舞台に出るのが得意ではない生徒たちも積極的に関わったそうです。
この他にも、司会進行役として場を盛り上げる生徒や実行委員として体育祭を裏側で支える生徒など、ASU☆FESでの輝き方は一つではありません。それぞれの場所に、それぞれの主役がいました。
体育祭というと、どうしても運動が得意な子が中心になりがちです。でもASU⭐︎FESでは、ダンスが得意な子がパフォーマンスで輝く一方で、装飾制作に打ち込む子、運営を支える子もいる。
それぞれがチャレンジできる場所を用意し、自分なりの一歩を踏み出す勇気を持ってもらいたくて、今の形になりました。
ちなみに装飾チームのリーダーたちには、練習最終日に全体の前で贈呈式を行い、挑戦した過程そのものを承認する場を設けたそうです。その“見られている安心”が、生徒たちの自信へ変わっていくのだろうと感じました。
生徒以上に熱い!黒子に徹する先生たち
もう一つ印象的だったのは、良い意味での、先生たちの存在感の“薄さ”です。
進行中はほとんど先生の姿や気配を感じなかったのに、フィナーレで最後にみんなで肩を組んで歌を歌う場面で先生たちがずらりと姿を見せたとき、「こんなに先生たちがいたんだ」と驚いたほど。先生の数は、総勢約350人。生徒を主役にするために、徹底して黒子に回っていたのです。

先生たちは何を大切にしながら、このASU⭐︎FESを支えていたのでしょうか。統括メンバーの一人・大宮キャンパスの迫俊和さんが意識していたのは、「生徒の感情を動かすこと」でした。
普段の学校生活だけでは、感情が大きく動く場面はそう多くありません。感情を出すことで傷ついてきた子や、恥ずかしさを覚えてきた子もいます。
だからこそ、このフェスを通して、喜んだり悔しがったり、自分の感情が動く経験をしてほしいと思っていました。
そのために迫さんがやったことは、とてもシンプル。教員も全力で取り組むこと。勝ちたい、成功させたい、いいフェスにしたい。その感情を大人が本気で持ち、体現することが生徒たちへのメッセージになり、動き出す力になっていると言います。
ASU⭐︎FESは、チャレンジできる機会と一歩踏み出す勇気を大切にしている行事です。当日ここに来られた、それだけで大成功という生徒もいます。来てくれたら、まず『よく来たね』と伝える。端で見ているだけでもいい。その場にいられたという経験自体が、次につながると思っています。
最初は想像がつかなかった通信制高校の体育祭。飛鳥未来高校グループのASU⭐︎FESにあったのは、取り戻したい時間や挑戦の機会、そして学校生活の思い出をつくり直せる壮大な舞台と、生徒たちがもともと持っている光が思いきり表に現れ輝く時間でした。
飛鳥未来高校グループの皆さま、眩しい青春のエネルギーに満ちた体育祭を取材させていただき、ありがとうございました!
〈取材・文:先生の学校編集部/写真:竹花 康〉