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片づけから始める仕事革命。職員室のモノ、1t捨てたら残業へりました!

片づけから始める仕事革命。職員室のモノ、1t捨てたら残業へりました!

愛知県の公立小学校で7年間働きながら、誰でもできる学校の働き方改革「学校の5S(整理、整頓、清掃、清潔、習慣)」をネット上で公開したことが話題となり、『職員室のモノ、1t捨てたら残業へりました!「捨てる」から始まる仕事革命』を上梓されたのが丸山瞬さんだ。

2020年春、新たな挑戦に向けて学校を退職した丸山さんは、整理収納アドバイザー1級の知識を生かし、片づけを中心とした学校の組織的な仕事改革をサポートしている。

なぜ学校で片づけを始めたのか、片づけることで見えてきた学校の課題とは何か。新たな挑戦を始められた丸山さんに話を聞いた。

写真:丸山 瞬(まるやま しゅん)さん
丸山 瞬(まるやま しゅん)さん
愛知県生まれ。小学校教員として働きながら、誰でもできる学校の働き方改革「学校の5S」をネット上で公開したことが話題となり『職員室のモノ、1t捨てたら残業へりました!「捨てる」から始まる仕事革命』を出版。整理収納アドバイザーの1級の知識を生かし、片づけを中心とした学校の組織的な仕事改革を行う。


「学校はとにかく物が多い」は全国共通の課題

——丸山さんはどうして学校で片づけを始められたのでしょうか?

学校にはモノが沢山あって、それらを片づける必要があると思ったからです。

教員の長時間労働は社会問題になっていますが、そんな状況なので片付けの時間が取れず、全国的にこんな状態の学校が多いはずです。

教員としていくつかの学校で勤務させていただきましたが、とにかくどの学校にもモノが多く、全国共通の課題なのでは?と思いました。全国共通の課題ということは、それを解決することができれば、解決の輪が広がっていくのではないかとも考えました。

「この現状を打破せずに、長時間労働の解決はない!」そう確信し、学校の片付けを始めました。

最初は、必要に迫られた感じでしたが、そこから勤務校の先生方と協力して1年目は1.5tのモノを、2年目は1.7tのモノを校内から断捨離することに成功しました。


——確かに、学校にはモノが多いイメージがあります。

モノが多い現状が当たり前になってしまっているので、片づけをするということは「当たり前を変える」ことに繋がります。だからこそ、抵抗感を持つ先生方もいらっしゃると思います。

学校は基本的にビルド&ビルドで、いろんな人の当たり前がどんどん積み重なって今の学校の現状が出来上がっています。

でもGIGAスクール構想、新学習指導要領、新型コロナウイルスの対応など新しい当たり前が始まったとき、今までの当たり前を持ちすぎていると、新しい当たり前に向き合う「余白」や「余裕」が生まれません。

だからこそ、今までの当たり前を少しずつ手放していかなければいけないと思いました。

誰でもできる片づけを通じて、モノを手放す・減らすということを日常化して、新しい当たり前を作ってほしいと思っています。


——はじめから片づけに学校を変える力があると思って、始められたのでしょうか?

いえ、行動して気づいたという感じです。

例えば、発展途上国に海外旅行に行って子どもたちが路上でお金の施しを受けようとしている姿を見たとするじゃないですか。今まで知らなかったけれど、発展途上国には子どもが働かなきゃいけない現状があるんだって気づく。

そういった忘れられない体験を通して、それを解決するために活動を始めるということ、ありますよね。それと同様に、私の場合は、まず学校にモノがあふれていることに気づいて実際に手を動かしてみたというスタートでした。

それから「もっとこうしたらいいのではないか?」といった問題点とアイデアが浮かぶようになりました。それらを一つずつ解決していくことが、現状をよりよくすることに繋がるのではないかと考えています。


——実際に学校の片づけを推進する上で、大変だったことはありましたか?

周りの方々から賛同を得るのが大変でしたね。片づけをしていると、変わり者と思われることが度々ありました。

私自身は片づけって良いことだと思って取り組んでいましたが、人によってはそのように思わない方もいらっしゃいます。「勝手に何、片づけているの?」と言われたこともあります。

いろいろな考えや年代の方がいる中で、片づけの必要性や良さを理解していただき広げていくということが難しかったです。


——そのようなご苦労もされながら、片づけの輪が広がったきっかけは何だったのですか?

校長の承認を得て、全体に周知いただいたことがきっかけになりました。

講師時代、一人で倉庫の掃除や教材室の片づけをしていました。結局それは学校全体に波及することなく、「丸山さんって、片づけが好きなんだね」と終わってしまいました。

そのような講師時代の経験から、正規教員になり片づけを始めるときには、校長の承認を得ることにしました。

「学校全体で、ちゃんとみんなでやっていきましょうね」という約束をしてから行うと、少しずつではありましたが広がっていきましたね。


片づけのコツは、一旦全部出すこと

——そもそも丸山さんは、昔から片づけが好きだったのでしょうか?

好きでしたね。居酒屋でバイトしていたときは、この棚の中に眠っている使っていないモノを捨てたらもっと快適に働けるんじゃないかと考えていました。

空間をじっくり見ると、その場所にない方がいいモノ、片づけた方がいいモノが見えてきます。目につく場所はすっきりさせた方がいいとか、向きを揃えた方がいいとか、具体的な行動が浮かんできます。

最終的に「みんなが居心地よく快適に生産性高く」というビジョンがあると、職場作りでも、自分の部屋作りでも始めやすくなるのではないかと思います。


——丸山さんのお話を聞いて、片づけを始めてみようかなと思う方がいらっしゃると思います。片づけのコツはありますか?

まず最初に、片付けたい場所のモノを全部出すという「全出し」の作業がコツです。

全部出した上で、いるモノ・いらないモノ・残しておきたいモノ・迷っているモノみたいに、分けていきます。

モノを最初に全部出すことで「思った以上にモノがたくさんあること」を知ることができます。これだけあるなら、いらないモノもあるし、減らすことができるなって気づくことができる。

全出しをしないで片づけると、こんなにモノがあったという事実を知るきっかけがないので、いらないモノに気づくことが遅くなったり、鈍くなったりします。最終的に、整理整頓だけして無理にでも収納してしまおうとしたり…。

でも全出しをすると、一回出したものをしまうのはもったいないし、解消したいと思えるようになります。


——おもしろいですね。先生たちの業務の整理にも生かせる感じがします。

片づけと言えば、こんまりこと近藤麻理恵さんが有名ですが、そういった方の片づけの本を読んで、モノの片づけ方の話だけど、学校に置き換えて考えることもできるなと思っていました。

学校はモノも多いし、業務や行事も多い。手放すことで本当に向き合いたいことに向き合う、という片づけの根底に流れる考えと学校の現状をミックスして、学校での片づけを広げていきました。


片づけは、交流

——そんな中、学校を離れる、先生を辞めるという決断は大きいものだったと思います。学校や先生をサポートする側に回ろうと思ったきっかけは何だったのですか?

大きなきっかけは、片づけ通じて教育現場を変えていきたい、もっとこの活動を広げたいと思ったからです。自分の得意なことで、教育に携わりたいと思いました。

コロナになってやりづらい部分もあったのですが、全国の学校を片づけて回ったり講演したりして「学校の片づけ」を広めていきたいです。あくまでも、学校の片づけにこだわりたいと思っています。


——丸山さんにとって「片づけ」とは何でしょうか?

一言でいうと、片づけは交流です。

これは一般の家庭の片づけと、企業や学校の片づけと違うところだと思うのですが、職場を片づけるというのは何十人もいる共有スペース、みんなが使っているところを整理するということです。

片づけていると誰かと交流する機会が自然に発生するんですよ。そして交流することでが新しいアイデアが浮かんだり、新しい取り組みを前に進めたりするきっかけになったりもするんです。

目の前の仕事に集中しすぎると、自分の仕事は自分だけで完結させてしまいます。苦しいことや変えていきたいことも、相談できずに溜め込んでしまうこともあるのではないでしょうか。

片づけを通じた交流があれば、「もう少し早く帰れるようにしていきたいですよね」という何気ない一言からさまざまなことが改善していくかもしれません。片づけが、そんなきっかけになってくれれば嬉しいですね。


——最後に、働き方に悩む先生方へメッセージをお願いします。

「自分ができることを知る」ことが大切だと思います。

やりたいこと、やらなければいけないことの全てを完璧に行うことは、今の学校の現状だと難しいと思います。だからこそ自分の力量を正しく理解して、どうしてもできないことは頼ったり、手放す選択肢を持つことも大切だと思います。

あとは、仲間を増やすこと。片づけの仲間でもいいですし、早く帰る仲間でも何でもいいので仲間を作ること。

一人で悩んでいても何も解決しません。同じような方向で考えている人を見つけて、一緒にやっていくことで少し気持ちが軽くなるのではないかな、と思います。

今現場から離れてみて、教員として子どもと関わることができるというのは、本当に貴重なことだし、改めて先生って尊い職業だなと思います。

子どもとのやりとりや、子どもが与えてくれるものというのは学校以外では絶対経験できないものだと、改めて実感しています。

〈取材・文=工藤 麻乃〉