スマートフォンの外にある“社会のリアル”を、生徒たちに。創立104年の十文字高校が探究の入口に「SDGs/社会問題スタディツアー」を置く理由 <PR>
「社会課題に関心を持ちなさい」と言っても、教室の中だけでは限界がある。総合型選抜が広がり、生徒一人ひとりが「自分の言葉」で志望理由を語ることが求められる今、探究学習の“種まき”をどうするかは、多くの学校が頭を悩ませているテーマだ。
東京・豊島区にある十文字高等学校(以下、十文字高校)は2022年度、新設した「リベラルアーツコース」の高校1年生を対象に、社会課題の現場を訪れる「SDGs/社会問題スタディツアー」(株式会社Ridilover提供)を導入した。今の時代の生徒たちに本当に必要な「体験」とは何か。
コース主任の浅見武さんに、なぜ今「社会の現場」を訪れる体験が必要なのか、そしてそれが生徒の進路やキャリアにどうつながっているのか、話を聞いた。
十文字高校にて数学教員として37年間勤務。担任として中学・高校を3周18年経験した後、中学校スーパー選抜クラス主任、中学教頭を歴任。2022年度より現職のリベラルアーツコース主任を務める。同コースでは、幅広い学びを通じて生徒一人ひとりの可能性を広げることを理念に掲げ、探究学習の充実や「SDGs社会課題スタディツアー」の導入など、教室の外とつながる体験型教育を積極的に推進している。進路部・入試広報部も兼務し、生徒の進路支援にも尽力している。
伝統校が挑む、新しい教育の形
ーー十文字中学・高等学校は、100年以上の歴史を持つ伝統校です。まずは、貴校が大切にしている教育理念について教えていただけますか。
本校の教育理念は、創立者・十文字ことが掲げた「身をきたへ 心きたへて 世の中に たちてかひある 人と生きなむ」という建学の精神に集約されています。
100年以上前、まだ女性の社会進出が一般的ではなかった時代に、心身を鍛え、社会に役立つ女性を育てようと立ち上がった学校です。この建学の精神は、創立から103年が経った今も、私たちの教育の根幹となっています。

私たちが大切にしている言葉の一つに「自彊不息(じきょうやまず)」があります。「自ら鍛え続けることをやめない」という意味で、毎朝校庭で行う「自彊術体操」としても実践しています。
コロナ禍を除き、100年以上続いてきた、本校ならではの文化です。私自身も37年間、ほぼ毎日続けています。やらない日は体がほぐれない気がするほど、すっかり体に染み込んでいます(笑)。
ーー十文字高校では、2022年度に3コース制へ移行したそうですね。その背景を教えてください。
十文字高校では現在、特色の異なる3つのコースを設け、生徒一人ひとりの個性を伸ばす教育に取り組んでいます。具体的には、難関大学・国公立大学を目指す「特選コース」(2クラス)、幅広い教養を重視する「リベラルアーツコース」(5クラス)、そして探究学習を中心に据えた「自己発信コース」(1クラス)の3つです。
例えば自己発信コースでは、探究の時間を週4時間設けるなど、それぞれのコースが異なるカリキュラムで学びを展開しています。
この3コース制に移行した背景には、大学入試の多様化と、社会の変化があります。SDGsをはじめとする社会課題への関心が高まり、広く社会を見渡す視点が求められる時代になりました。そうした中で、従来の「進学クラス」「選抜クラス」という二つの枠組みだけでは、生徒の多様なニーズに応えきれなくなってきたのです。
さらに、社会の変化と共に大学入試も細分化が進んでいます。こうした状況を踏まえ、2022年度から3コース制へと再編しました。

ーー浅見さんが主任を務める「リベラルアーツコース」には、どのような特徴があるのでしょうか?
最大の特徴は、高校2年生から文理選択ではなく、科目選択にしていることです。リベラルアーツコースの生徒は、進路が本当に多岐にわたります。国際、環境、看護・医療、栄養、芸術、体育、情報など、文系・理系という枠に収まらない夢を持っている生徒が多いんですね。そのため、高校1年次では幅広く教養を学び、2年次からは自分の将来や受験科目に合わせて、柔軟に選択科目を選べるようにしています。
そもそも「リベラルアーツ」という言葉には、幅広い教養を自分の専門分野に生かしていくという考え方があります。早い段階で文理を固定して受験勉強に特化するのではなく、まずは視野を広げ、自分で考え、自分で選択する。そうした「自立した学び」を促すことが、このコースの大切な役割だと考えています。
現場に触れて、初めて「自分事」として動き出す
ーーリベラルアーツコースの設置当初から、株式会社Ridilover(以下、リディラバ)が提供する「SDGs/社会問題スタディツアー」を導入しているそうですね。導入された理由を教えてください。
高校1年生の探究学習のスタートとして、生徒たちに社会問題のリアルに触れる機会をつくりたいと考えました。教室で映像を見たり、大学の先生を招いて講義を聞いたりする機会はありますが、どうしても一方通行の学びになりがちです。
それだけに留まらず、生徒たちには実際に外へ出て、社会の現場で何かに取り組んでいる人たちに出会ってほしかったんです。ただ、遠足のように全員が同じ場所に行き、後ろをついて回るだけの形にはしたくありませんでした。
私が求めていたのは、少人数のグループでそれぞれ興味のある現場に分かれて行けること。そして、クラスの枠を越えて、同じテーマに関心を持つ生徒同士が集まれること。この2つを実現できる方法を探す中で、リディラバさんのスタディツアーに出会い、導入を決めました。
ーーなぜ、生徒たちが「外に出る」ことを大事にされたいのでしょうか?
今の生徒たちは、スマートフォンの中で世界が完結しがちです。自分の好みに合った情報ばかりに触れ、それ以外のことにはなかなか目が向きにくい。だからこそ将来を考える上では、自分の知らない世界にも少し関心を持つことが大切だと思っています。

近年、テレビや新聞では「SDGs」に関するニュースや取り組みが多く報道されています。しかし、実際に社会課題に向き合っている企業や団体が、どのような思いで、どのような苦労を重ねながら活動しているのかは、現場に行かなければなかなか見えてきません。
現場で「社会のリアル」に触れることで、初めて社会課題が「自分事」として動き出す。その「自分事化」こそが、探究学習を形骸化させないための原動力になると考えています。
ーースタディツアーの導入にあたって、一番の課題はどこにありましたか?
担任の先生方への負担を、いかに増やさないか。それに尽きました。
現場の先生は日々とても忙しいですから、新しい行事を追加する際に、負担感や不安感を抱かせてしまってはいけません。担任の先生に過度な負担をかけずに、質の高い学外体験をどう実現するか。それが私にとっての一番の課題でした。
その点で、リディラバさんのプログラムは訪問先の候補出しや調整、事前学習、当日の現場へのアテンド、帰着後のワークショップまで一体的に設計されています。スタッフが全体をリードしてくださるので、ファシリテーションも含めて安心してお任せすることができます。担任が一から企業や団体と交渉する必要がなく、生徒を「社会のリアル」に触れさせることができる。この点は大きな魅力でした。
実際に導入してみると、当日は5〜6か所の訪問先に分かれて動くため、遅刻や欠席の連絡対応など、担任が関わる場面もあります。ただ、午後のワークショップはリディラバさんが主導してくださるので、担任は基本的に見守る形で参加できます。結果として、全体としての負担は十分に許容できる範囲に収まっていると感じています。
現場での体験が、自身の探究テーマを見つける種に
ーーこれまで印象に残っているツアーの訪問先があれば教えてください。
これまで、障害者雇用に取り組む花屋、補助犬の普及啓発団体協会、木材の展示施設、ロボット体験施設など、毎年さまざまな現場を訪れています。例えば昨年はがん医療をテーマとしたツアーで東京のとある病院を訪問しました。
医療系の進路を希望する生徒が多いリベラルアーツコースでは、特に大きな反響がありました。またロボットのコースでは、ロボットに実際に触れて体験できるプログラムがあり、私も同行しましたが、とても興味深く、楽しませていただきました。

訪問先を選ぶ際には、「会議室で説明を聞くだけ」といった形式はできるだけ避けています。その企業や団体が実際に活動している場所を訪れ、現場を直に見て、話を聞けること——これを条件にしています。また、私自身が理系寄りの視点で選んでしまいがちなので、他の先生にも一緒に見てもらい、文系の生徒も関心を持てるテーマがそろうよう意識しています。
ーー生徒への訪問先の事前説明は、リディラバの担当者に学校に来てもらっているそうですね。
はい、初年度から毎回お願いしています。映像だけで事前学習ができる仕組みも整っているのですが、実際に来ていただき、直接説明してもらう方がやはり効果的です。
「このコースはこんな内容で、こういう進路を考えている人にぜひ来てほしい」といった話を、本校の先生ではない立場の方から伝えてもらうことで、生徒が自分の関心に基づいて主体的に選ぶきっかけになるからです。また、「友達が行くから一緒に行く」といった選び方を防ぐ意味でも、こうしたリアルなコミュニケーションは大切にしています。
ーー十文字高校では、スタディツアーを午前中の現場訪問と、午後は学校に戻ってワークショップという形で実施しています。1日を通して、生徒たちの様子はいかがですか?
全ての現場訪問に同行できているわけではありませんが、特に印象的なのは、ツアーから戻ってきた後のワークショップでの生徒たちの表情です。私は数学の教員ですが、正直、教室で数学の授業を受けているときの顔とは全く違います(笑)。

いつものクラスメイトではなく、同じ現場を訪れたメンバー同士で、「自分たちならどう解決するか」を付箋を使いながら真剣に話し合っている。そういう場面を見られることが、このプログラムの大きな価値だと感じています。
また、訪問して終わり、感想を書いて終わり、という形にならない仕組みがあるからこそ、生徒たちの思考がより深まっていくのだと思います。最近では、このツアーをきっかけに自分の探究テーマを見つけ、1月の探究発表会で素晴らしいプレゼンをする生徒も増えてきました。
スタディツアーは、自分の言葉をつくっていく「最初の一粒」
――スタディツアーの経験は、大学入試やその先の進路にもつながっているのでしょうか?
リベラルアーツコースでは、学校推薦型選抜や総合型選抜といった、いわゆる「年内入試」で進路を決める生徒が、全体の約3分の2を占めます。こうした入試では、付け焼き刃ではない、生徒自身の「内に蓄積されたもの」が問われます。
高校1年生のときに現場を訪れ、その後2年間かけて探究してきた経験が、面接や小論文で語れる「自分の言葉」をつくっていく。スタディツアーは、その「最初の一粒」として機能していると感じています。

また、このツアーを高校1年生の1学期に実施しているのも意図的です。探究学習が本格的に始まる前の段階で「社会にはこういう動き方があるんだ」と知ることで、その後の1年間の探究テーマを自分で考えていける。種まきの時期としては最適だと思っています。
高校1年生の段階でスタディツアーという「種」をまいておくことで、生徒たちは自らの意志で動き始めます。夏休みに自分から企業や大学の研修プログラムに申し込んだり、カンボジアの支援活動に飛び込んだりする生徒も出てきています。
こうした「自走する力」は、小論文や面接において圧倒的な説得力になります。結果として、看護・医療、栄養、芸術など、自分のやりたいことに特化した進路で合格を勝ち取っていく。それは単なる受験実績というだけでなく、彼女たちが社会に出たとき、世界のどこにいても自分で考え、生きていける「生きる力」につながっていると確信しています。
ーーこのプログラムを通して、生徒たちに最も持ち帰ってほしいことを教えてください。
「自分は小さな一人だから、大きなことはできない」と思うのではなく、一人ひとりが考え、行動を起こすことが、世界の持続可能な社会を支えているのだという感覚を持ってほしいと思っています。
これからの時代は、世界に出て働くか、日本で働くかに関わらず、世界のことを考えずには生きられない時代です。このスタディツアーが、そうした視点を持つための最初のきっかけになってくれれば十分です。

私は、学校とは「社会に出る前に社会を学ぶための縮図」だと思っています。ただ、縮図の中だけにいては、井の中の蛙になってしまう。だからこそ外へ出て、実際に動いている社会のリアルに触れることが必要なのです。
十文字学園の建学の精神である「世の中に役立つ人になれ」は、100年経った今も変わっていません。ただ、それをどう実現するかという形が、時代とともに変わってきているだけなのだと思います。
――最後に、今後の展望と、探究学習に悩む先生方へメッセージをお願いします。
私は数学の教員として長く教壇に立ってきましたが、生徒たちには「誰かに言われたからやる」のではなく、自分から何かをおもしろがって取り組んでほしいと、常々思っています。
私事ですが、生徒たちに「仕事を辞めたら気象予報士に挑戦してみたいんだ」と話すことがあるんです。合格できる自信は全くないんですけどね(笑)。それでも、いくつになっても新しいことに興味を持ち、挑戦し続ける姿勢を、生徒たちに見せていきたいと思っています。

探究学習は、すぐに目に見える成果が出るものではありません。しかし、スタディツアーのような「本物の体験」は、生徒の心に確実に火を灯します。先生方だけで全てを抱え込むのではなく、リディラバさんのような専門組織の力も借りながら、生徒たちが世界を見据えて自走できる環境を、これからも整えていきたいと思っています。
SDGs/社会問題スタディツアー by 株式会社Ridilover(リディラバ)問い合わせ情報

「SDGs/社会問題スタディツアー」は、修学旅行や校外学習の機会を活用し、社会課題の現場を訪れて学ぶ探究学習プログラムです。東京・京都・大阪・沖縄などを中心に約130テーマのツアーを保有。課題解決に取り組む当事者から社会課題解決のリアルを情報収集し、生徒が主体的に「自分にできること」を考える機会を提供します。
2014年の開始以来、全国の私立・公立の中学校ならびに高等学校に導入され、年間60校、1万人を超える生徒が参加。動画教材やワークシートを用いた事前学習、五感を刺激する現場体験、独自のフレームワークを活用した課題解決ワークショップを組み合わせて、社会課題の一次情報収集〜解決策のまとめ・表現までを一気通貫で体験することができます。

本プログラムは、多種多様な社会課題のツアーを保有しているため、生徒の関心や学習状況に合わせたプログラム設計が可能であることや、リディラバのファシリテーターがツアーに帯同し、生徒の学びを最大化できるようにプログラム進行を実施できる点が強み。
訪問先調整や当日の運営を一括して担うことで、教員の業務負担を軽減しながら、社会のリアルに触れることのできる校外学習を実現します。
「SDGs/社会問題スタディツアー」の詳細・お問い合わせはこちら
https://ridilover.jp/study-tour/
<取材・文:先生の学校編集部/写真撮影:竹花康/写真提供:リディラバ>