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日本初の「SDGs制服」とは?大阪夕陽丘学園高校の制服から始めるSDGs

日本初の「SDGs制服」とは?大阪夕陽丘学園高校の制服から始めるSDGs

大阪市の天王寺区にある大阪夕陽丘学園高校は、生徒数約1,200人の私立高校だ。

SDGsの取り組みの一環として、今年度より「SDGs制服」を全国で初めて導入した。

制服を変えることに対して学内では反対意見もあったというが、街頭に立って高校生の生の声を聞き、検討・導入されたSDGs制服は、先進事例として多くのメディアや学校から注目されている。

今回は、SDGs制服の導入を指揮された「制服改革プロジェクト」メンバーの大崎俊人副校長に、SDGs制服の詳細や導入までの経緯について話を聞いた。

写真:大崎 俊人(おおさき としひと)さん
大崎 俊人(おおさき としひと)さん
私立大阪夕陽丘学園高等学校 教頭兼任副校長 

1992年、大阪体育大学を卒業後、兵庫県の私立高等学校に保健体育科教諭として勤務。
全国大会常連校のハンドボール部の2代目監督としてチームを指導し、インターハイ優勝をはじめ、全国大会等で実績を残す。その後、教頭、校長として学校運営に関わり、2018年から大阪夕陽丘学園高等学校に教頭として勤務。現在は教頭兼任副校長として10年の管理職経験を生かし、建学の精神を大切に、現場の先生がチャレンジしやすい教育環境を目指し、生徒中心の魅力ある学校づくりに邁進する。


リサイクルすることを前提としたSDGs制服

——SDGsの取り組みとして「制服を変える」というのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

学校の創設者が大丸百貨店の2代目社長を務めた里見純吉先生で、本校は令和元年度(2019年)に設立80周年を迎えました。里見は敬虔なクリスチャンだったこともあり、「愛と真実」という建学の精神を大切にしていました。

また、「一人ひとりの生徒の個性を大切に扱う」ことも重視しており、この考えはSDGsにも共通すると本校の理事長が考え、令和元年度に国連グローバル・コンパクトに加盟しました。

創立80周年記念式典のタイミングから、短大や高校それぞれにおいて、SDGsに取り組み始めています。

そのような中、制服を変えたのは、現在の2・3年生が着用しているこれまでの制服が、非常に人気の高い制服ではあったものの、教育改革の旗印にしたいと思ったのがきっかけです。

制服は学校を選ぶ大きな判断材料であり個性でもあるため、より大阪夕陽丘学園が変わろうとしているというメッセージになればと思いました。

大阪市の天王寺区にある大阪夕陽丘学園高校


——そうして「制服改革プロジェクト」をスタートされたと。

そうですね、「制服改革プロジェクト」を立ち上げ、制服を変える取り組みがスタートしました。

制服は、複数の取引先が用意した選択肢の中から選択するケースが一般的ですが、そのやり方ではない方法を模索しました。

せっかくであれば本校らしい、尚かつSDGsにも貢献できる制服を作りたいと考えていたので、糸1本から注文を出したいと思っていた中、その注文に応えてくれる企業が見つかったこともあり、プロジェクトは一気に加速しました。

「SDGs制服」という名称は本校が発祥です。


——SDGs制服の定義やコンセプトについて教えてください。

SDGs制服の本校の定義は、「リサイクルすることを前提とした制服」です。

生徒が使わなくなった制服を企業にお渡しして、もう1度新しい糸から制服を作れるように循環できる仕組みを整えています。

機能面にもこだわり、速乾性や放熱性といった点はもちろん、特に消臭機能に優れた制服としました。学校で生活していると汗をかくシーンが多く、消臭機能は必要だと思って取り入れました。

関西の中高生は、ユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)に制服で出かけることを一種のステータスにしていることもあり、「都会の制服」をコンセプトとしつつ、「USJにもそのまま着ていきたいと思える制服」を目指しました。

制服の色は赤にしましたが、スクールカラーが青だったこともあり、学内で反対する声もありましたね。

制服のBEFORE→AFTER


約300人の高校生に街頭インタビューを実施

——反対の声に対してはどのように対応されたのでしょうか?

プロジェクトメンバーの先生方と一緒に大阪の中心地である難波に出向き、赤・青のどちらの色がいいか、街頭アンケートを実施しました。

しっかりと警察に届けを出した上で高校生と思われる方たちに声を掛け、どっちの制服を好むかボードにシールを貼ってもらったんです。合計で約300人ほどに声をかけました。

アンケートの結果、冬服は9:1ぐらいで今の新しい制服の人気が高くなった一方で、夏服は8:2ぐらいでこれまでの制服が良いという意見でした。

このアンケート結果をそのまま職員会議に出したところ、反対の意見は出なくなりましたね。

本当に高校生が求めているのは何か、客観的な指標を示したことで思い込みでの反対意見もなくなったと考えています。


——SDGs制服が導入され、実際に生徒さんの反応はいかがでしょうか?

反応は見事に分かれていて、以前の制服を着用している現在の2・3年生は、SDGs制服を良いと思っていない生徒がほとんどです。

一方、SDGs制服を着用している現在の1年生は、以前の制服を良いと思っていません。

それぞれがお互いの制服をうらやましく思っていないため、やや不思議な感覚にもなりますが、言い換えれば価値観の違う生徒が集まったとも言えます。

とはいえ、2021年8月に行われた「大阪私立学校展」で制服を展示したときには、好評の声が多く聞かれましたね。

夏用のポロシャツに関してはさまざまな意見があり、中にはポロシャツを好まない生徒もいたため、シャツを新たに用意しました。

今の中高生はシャツを折って制服を着用したい生徒が多く、ポロシャツがあまり好まれていないことが分かったのは勉強になりました。

リサイクルすることを前提としたSDGs制服


——SDGs制服は今後取り組む学校が増えていきそうですね。

実際にテレビや新聞社からの取材を受けたり、他の学校から「SDGs制服を作りたいので教えてほしい」という相談をいただいたりしました。

また、「SDGs制服を作ることになった」という声をいただいたこともあります。プレスリリースなどは出していませんが、口コミでSDGs制服の情報が広がっているようです。

現在は制服が注目されていますが、今後はよりSDGsについて理解を深めていき、解決したい課題を見つけて取り組むことも進めたいと考えています。

本質的なSDGsに取り組む前段階としても、SDGs制服は大きな役割を果たしています。

〈取材・文=西本 友/写真=大阪夕陽丘学園高等学校提供〉