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主体性は、社会の問題を“ちゃんと知る”ことで走り出す!Project ではなく、Ploblem Based Learningで取り組む「チョコプロジェクト」

主体性は、社会の問題を“ちゃんと知る”ことで走り出す!Project ではなく、Ploblem Based Learningで取り組む「チョコプロジェクト」

神奈川県の湘南の地に佇む湘南学園は、1933年に創立され、今年で87周年目を迎える幼小中高の私立一貫校だ。

持続可能な社会の担い手を育てることを目的に、SDGsにもつながる子どもたちの発達段階に応じて、集団や社会への認識を深めていく総合学習やクラウドファンディングを取り入れた課題解決型学習など、特徴的な教育活動を実践している。

その湘南学園中学校で2018年、当時中学1年生の有志メンバーにより「チョコプロジェクト」、通称「チョコプロ」が立ち上がった。

「チョコプロ」は、身近なチョコレートを通して世界とのつながりや児童労働問題について考え、問題解決のために行動するプロジェクト。授業での学びが校内や身近な地域での取り組みに発展し、その先の持続可能な社会の実現に向けて現在も活動の輪を広げている。

このプロジェクト発足のきっかけを作り、生徒たちの自主活動を支えてきたのが、湘南学園で社会科を受け持つ清水直哉先生だ。
清水先生に、チョコプロの詳細や生徒の主体性を引き出す教員の関わり方について伺った。

写真:清水 直哉(しみず なおや)
清水 直哉(しみず なおや)
湘南学園中学校・高等学校 社会科主任
2011年4月に湘南学園へ入職。2013年度より生徒会指導委員会として、学校の自治活動を生徒と共に作り上げる。2018年度からは社会科主任として、「社会科」という教科を通して、生徒の学力向上と、社会に対する興味関心と認識が高まる実践の向上に向けて、教科の先生たちと積極的に研修会などを実施している。


持続可能な社会の担い手を育てる湘南学園の教育風土

――チョコプロ発足のきっかけについて教えてください

私の地理の授業ではいつも、児童労働問題に取り組むNGO団体「ACE」が作成した「おいしいチョコレートの真実」というワークショップ教材を使います。

身近なチョコレートの裏側には、途上国の子どもたちの過酷な児童労働の実態があることを知ると、生徒たちもそれぞれにいろいろな思いを抱きます。

ただ「かわいそう」で終わらせず、もう一歩踏み込んだ行動に発展させることができないかと思っていました。


そこで、生徒たちに「みんなで何かやってみないか?」と呼びかけてみたんです。
すると、授業後に1人の生徒が「自分に何かできることがあればやってみたい」と声を上げてくれました。

湘南学園ではクラウドファンディングを利用した課題解決型学習(Project Based Learning、以下PBL)を実践しているのですが、いずれはこれを活用することも見通しながら「プロジェクトを立ち上げてみたらどうか」と返しました。

結果的に30名ほどのメンバーが集まり、チョコプロがスタートしました。

 
――チョコプロではどんな活動をしてきたのですか

まずは自分たちで本を読んだり調べたり、夏休みにはACEさん主催のワークショップに参加するなど、児童労働に関して実態を深く知ることから始めました。

そうして自分たちの理解を深めた後に「児童労働について知ってもらうこと」を初年度の活動テーマに掲げ、学園祭では途上国の子どもたちに送るための文房具を回収したり、児童労働の実態を知らせる展示を行ったりしました。

その他にも駅前での募金活動、クラウドファンディングで資金を集めて『バレンタイン一揆』というドキュメンタリー映画の上映会やフェアトレード商品の校内販売会、SDGsの達成を目指す全国フォーラムでの発表と、生徒たち自身で活動を広げていきました。


――中学1年生ですごい行動力ですね。清水先生はどのような形で関わっていらっしゃったのでしょうか

中学へ入学したての1年生は、良い意味で怖いもの知らずなところがあって、前のめりにチャレンジしてくれます。

私は部活の顧問のような立ち位置で、定例会議に入って議論し合える雰囲気を作ったり、クラウドファンディングをやる際のこまごました調整やリターンの設定をしたりと裏方に徹していました。それがめちゃくちゃ大変でしたけど(笑)。

基本的には、生徒たち自らが動かしていく“自治活動”なので、教員としては適度な距離を保ちながら支えるのが一番かなと思っています。

湘南学園はもともと体育祭や学園祭などの学校行事を生徒会が中心となって進めていくなど、自治活動が盛んだったこともあり、チョコプロの活動もスムーズに進みました。


自治活動を、豊かな学び多き“教育活動”にする先生の関わり方

――生徒が自主的に動かしていく自治活動に、どの程度どんな形で関わるかは多くの教員が悩むところだと思います

生徒たちに全てを任せるというやり方もありますが、自治活動は生徒の成長につながる“教育活動”でもあると思っています。

学校行事を作るのと同じで、せっかくやるならその過程で、成長につながる機会や環境を作ってあげたい。メンバー同士で議論し合う方向に持っていったり、深く考えさせるための種を撒いたり。

プロジェクトを、豊かな学び多き自治活動にするための環境を整えてあげることが、教員として大切な関わり方なんじゃないかと思っています。


――チョコプロを推進するにあたって清水先生が大切にされていたことがあれば教えてください

チョコプロはPBLの一環としての活動ですが、私の中でのPBLは、Project BasedではなくてProblem Basedなんです。

まずは、何が問題になっているのかをちゃんと知ることが重要で、その学びなしにプロジェクトを立ち上げても根本的な理解は絶対に深まらないと思っています。

チョコプロでも、そこのスタート部分を大事にしました。
生徒自身の理解が深まれば、この現状をどう変えたいか、そのために何ができるのかを自ずと考え始めるようになり、主体性が芽生えていきます。

チョコプロでクラウドファンディングを経験したことよりも、子どもたちがチョコレートの裏側に潜む児童労働問題について自ら問題意識を持って学び、アクションを起こしたところに価値があると思っています。


――社会からの応援を資金という形で集めるクラウドファンディングは、生徒たちにとって貴重な経験になったと思います。やってみていかがでしたか

そうですね。生徒たちにとっては、自分たちの取り組みが社会からどう評価されたかを実感することができる良い機会になったのではないかと思います。

一番良かったと思うのは、「自分たちが何のためにこれをやっているのか」という根本部分を彼ら自身が考え、自分たちの言葉で伝えられたこと。

人に応援してもらうには、ただ頑張っている姿を見せるだけじゃなくて、世界にはこういう現実があって、原因は何で、という背景を分かりやすく伝える必要があります。そのためには、まずは自分たちがそのことについて深く知らなければいけない。

その一連のループを経験できたことは良かったですね。

生徒に求めることは、教員もできているか?を常に問う

――チョコプロを通して生徒たちに何か変化はありましたか

社会の問題に自然と目を向けるようになったし、今後も常に社会問題を意識しながら生きていってくれるんじゃないかと思います。

社会とのつながりを持たずに生きていくこともできる時代の中で、生徒たちには、人の悲しみや苦しみを見過ごしてほしくないと思っています。

悲しみや苦しみの根源には必ず社会問題があって、それを知ったときには無関心に通り過ぎるのではなく、なぜそうなっているんだろう、自分にできることはないだろうかと、より良い社会を目指して主体的に関わっていってほしい。

そういう子どもたちを育てたくて教員になったので、チョコプロを通して成長する子どもたちの姿を見るのはうれしいですね。


――湘南学園の小学校アフタースクールともコラボレーションされたそうですね

はい。アフタースクールではSDGsについて大変深まった取り組みをしておられたので、小学生と中学生で何か一緒にできることはないかと話題になり、小学生たちを招いて児童労働についての映像を一緒に見ながら意見交換をしたり、フェアトレード製品を使ったお菓子作りや地理の授業でやった貿易ゲームを小学生向けにチョコプロの生徒たちがアレンジしてやったりしました。

いずれの企画も、子どもたちが内容を考えたり当日の進行も行いました。
いつも「教えられる側」であることが多い中学生にとって、小学生に「教えにいく、伝えにいく」試みは価値がありました。

小学生にとっても、身近な先輩と楽しく学べる機会になったと思います。それまでは互いに交流の機会がなかったので、これを機に今後も接点を作っていけたらと思っています。


――最後に、生徒たちの主体的な行動を引き出すために意識していることがあれば教えてください

生徒たちの意見が否定されることがないように、日頃から意見やアイディアを言いやすいような環境を作るようにしています。

あとは、生徒たちに主体性を求めるのであれば、私たち教員もちゃんとできているのか?は常に問わないといけないと思っています。

これからも、「生徒と学校、両者にとって豊かな学びにつながるならやってみよう!」を判断軸に、適度な距離感を大切にしながら、子どもたちの成長を支えていきたいと思っています。