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【第9回】コーチングはどのように学ぶのか(1)

【第9回】コーチングはどのように学ぶのか(1)

なぜ今、教育の世界で「コーチング」や「ファシリテーション」が注目されているのか?

伴走者として、学び手に関わる方々が、学び手の主体的・対話的な学びを加速させるために有効なコーチング(的な関わり)や、ファシリテーションスキルを紹介する連載です。

写真:木村 彰宏(きむら あきひろ)さん
木村 彰宏(きむら あきひろ)さん
国家資格公認心理師/米国CTI認定プロフェッショナル コアークティブ・コーチ/LEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎ メソッドファシリテーター

復興支援NPO職員、小学校の教師というキャリアの後、株式会社LITALICOに入社してLITALICOジュニア事業部にて子どもたちの発達支援に関わる。その後、人材開発部にて教育に興味関心ある学生や社会人のキャリア支援に従事。2020年4月からは、コーチングを通じて起業家や経営者をサポートする株式会社コーチェットにジョインし、トレーナー兼コーチとして活動。2021年4月からは軽井沢風越学園に参画し、5年ぶりに学校に戻って教育に関わっている。その他、複業として、プロコーチとしての業務、研修・WS設計、ファシリテーション業務、キャリア教育、教員の伴走支援などさまざまな活動を行っている。

この連載では、支援者・伴走者として学び手に関わる方々が、学び手の主体的・対話的な学びを加速させるために有効な、コーチング的な関わりやファシリテーションスキルを紹介させていただいています。

(※ 本連載で「コーチング」ではなく「コーチング的な関わり」という表現を使っているのは、私が教育現場においてコーチングのスキルや考え方・マインドセットなどが活用できると考えている一方、子どもたちに対して教育現場の中で行うその関わりは、あくまで純粋な「コーチング」ではないと線を引くためです。また、本連載においては、コーチングやファシリテーションの定義や方法論に固執するのではなく、紹介させていただくポイントを参照、実践いただきながら、学びの伴走者として皆さまご自身にとってのコーチング的な関わりやファシリーテーションの可能性を模索していただければうれしく思います)

前回までのこの連載では、支援者・伴走者として学び手に関わっていらっしゃる皆さまが、現場で生かせるコーチングの考え方やスキルについて、お伝えしてきました。

「コーチングを行う際に持っておくべきマインドセット」「バックキャスティング思考」「傾聴」「承認」「質問」「フィードバック」「提案・要望」それぞれ覚えていらっしゃいますか?

コーチングはそもそも背景理論の一つとして心理学がベースになっているアプローチで、同じく心理学の発展と密接に絡み合っている教育や人材育成の考え方との親和性が非常に高いです。そのため、支援者・伴走者として学び手に関わっていらっしゃる皆さまがそれぞれの現場で活用できるであろうコーチングの考え方やスキルには枚挙にいとまがありませんので、コーチングの考え方やスキルの紹介は一旦前回までとさせていただきます。

さて、2022年の6月に内閣府総合科学技術・イノベーション会議において決定された、「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」でも、「Teaching(指導書のとおり計画を立て教える授業)からCoachingへ(子供の主体的な学びの伴走者へ)」という言葉が表記され、子どもたちの主体的な学びに向けて、伴走者としての学び手へ関わる重要性や、コーチング的な関わりの重要性が益々注目されていると感じます。

そんな中、こうやって雑誌で記事を書かせていただいたり、さまざまな自治体や企業でコーチングについての研修をさせていただいたりしていると、「コーチング的な関わりが教育や人材育成に活用できるのは良く分かりましたし、紹介してもらった一つひとつのスキルはすぐにでも取り入れられそうなのですが、もう少し詳しくコーチングを学ぶにはどのようにすればいいですか?」という質問を本当に多くいただきます。

そこで、今回からは2回に分けて、私がお勧めするコーチングの学び方について、(1)学ぶ目的を明確にする (2)コーチングを受けてみる (3)コーチングを学ぶ (4)コーチングを実践する (5)コーチングを振り返る という5つのステップでご紹介したいと思います。

(1) 学ぶ目的を明確にする

(1)について考える前に、教育的文脈で私が使っている「コーチング的な関わり」の定義を改めてご紹介します。

連載第1回で、コーチングやファシリテーションについて教育的文脈で捉え直した際に、浮き上がってくる共通点として、”ティーチングやコンサルティングのように専門家が答えや知識を与える関わりではなく、伴走者が学び手に問うことや引き出そうと働きかけることを通じて、学び手が自分自身で考えや意見、また答えを見出していくことをサポートする関わりである” と書きました。

コーチングやファシリテーションの定義や意味づけは一意的でなく、人や組織によってさまざまな使われ方をされているのが実情ですので、コーチングを学ぶ目的を考える際に、教育的文脈で捉え直したコーチング的な関わりの定義が必要な方は、上記を参考にしてみてください。

ではあなたは、どんな場面で誰に対して、そんなコーチング的な関わりを活用したいですか?

学校で子どもとの関わりの中で活用したい、授業の中で活用したい、子育ての中で活用したい、同僚への関わりの中で活用したい、部下の育成において活用したい、プロのコーチになりお金をいただいて他者へコーチングを提供したい、などなど…。

数年前から、研修や個別の関わりを通してさまざまな方がコーチングを学ばれるサポートをしている中で、コーチングを学ぶ目的や個人のレディネス(学習の成立にとって必要な前提となる知識や経験など)によって相応しい学び方が異なると感じています。

また、コーチングに限らず、自分が何のために学んでいるかを明確にすることは、自身の学びを加速させる一つの要素になります。

最初は「部下との関わりの中で活用したい」と言っていた方が、コーチングを学ばれる中でそのおもしろさや奥深さに触れ、「やっぱりプロのコーチを目指したい」と学ぶ目的が変化していくケースも勿論ありますので、明確にする目的は一旦の仮置きでいいかと思います。

ぜひまずは、ご自身がコーチング的な関わりを活用してみたい場面を思い浮かべ、学ぶ目的をクリアにしてみてください。

(2) コーチングを受けてみる

あなたは、コーチングのどんな関わりに魅力や効果、可能性を感じてコーチングを学びたいと考えていますか?

これはファシリテーションにおいても同じことが言えますが、コーチングやファシリテーションを学ぶのであれば、やはりまずはご自身が実際にコーチングやファシリテーションを体験し、価値や魅力、可能性を感じてみることが非常に重要です。

その際によく耳にする失敗談が、コーチングを学んでいる最中の方や、コーチングという言葉をなんとなく理解している方からコーチング的な関わりを受けた結果、「一回受けてみた結果、コーチングが嫌いになった」という感想を持つ方がいらっしゃるという話です。

「なんだか、質問を通して誘導されている感じがした」「相手の関わりが、偉そうに感じた」「自分の話したくないことにまで、踏み込まれた感じがした」などなど…。

私が (2)コーチングを受けてみる、でおすすめしたいのは、一定数の研鑽や実践を積んでいて、且つ自分と相性が良さそうなプロのコーチから少なくとも数回は継続してコーチングを受けてみるということです。

ただ、一概にプロのコーチと言っても、世界中にさまざまなコーチングスクールがありそれぞれが資格を発行している現状や、これまでの人生の経験やセンスの要素も決して少なくないコーチングにおいては、「プロのコーチ」の定義が難しいのが正直なところです。

そんな中でも、例えば国際コーチング連盟(ICF)、欧州メンタリング&コーチング教会(EMCC)、コーチング教会(AC)、などは資格取得要件に実務経験があり、体系的な学習があるので「一定の学習と経験を積んだコーチ」と言うことができます。

また、国際コーチング連盟(ICF)は、ICFの資格取得に必要な条件を満たすとして、ACTP、ACSTH、CCEという3種類のコーチ・トレーニング・プログラム認定をしており、日本にもそれらの認定を受けたコーチングスクールが存在します。(株式会社 コーチ・エィ、株式会社ウエイクアップ CTIジャパンなど)これらの認定を受けたコーチングスクールで学ばれた方なども、「一定の学習と経験を積んだコーチ」と言えるかと思います。

一方、相性が合うコーチの見つけ方については、自分が信頼できる知り合いに紹介してもらったり、コーチング・プラットフォームを利用して探すのも有効でしょう。

他にも、そのコーチのこれまでの経歴や専門分野に加えて、普段使う言葉や表現、思想などもプロフィール欄や発信から受け取ることができる、SNS(Twitter、Facebookなど)でコーチングを受けてみたいコーチを探してみるのも一つの方法です。

上記、ご自身が自分と相性が良いプロのコーチを見つけてコーチングを受ける体験をされる際の一つの参考にしてみてください。

(3)コーチングを学ぶ (4)コーチングを実践する (5)コーチングを振り返るについては、次回、詳しくお伝えします。

今回の内容は、いかがでしたでしょうか。

本記事の内容が、変化が激しく未来が見通しにくい今の時代に伴走者として学び手に関わる皆さまにとって、学び手のより良い成長・変容に関わる際の一助となっていれば幸いです。

連載内容について何かご質問等ございましたら、いつでもTwitter(@1130kimura)のDMにてご連絡くださいませ。