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【第8回】教育現場で活かせるコーチングの考え方について(「フィードバック」「提案・要望」編)

【第8回】教育現場で活かせるコーチングの考え方について(「フィードバック」「提案・要望」編)

なぜ今、教育の世界で「コーチング」や「ファシリテーション」が注目されているのか?

伴走者として、学び手に関わる方々が、学び手の主体的・対話的な学びを加速させるために有効なコーチング(的な関わり)や、ファシリテーションスキルを紹介する連載です。

写真:木村 彰宏(きむら あきひろ)さん
木村 彰宏(きむら あきひろ)さん
復興支援NPO職員、小学校の教師というキャリアの後、株式会社LITALICOに入社してLITALICOジュニア事業部にて子どもたちの発達支援に関わる。その後、人材開発部にて教育に興味関心がある学生や社会人のキャリア支援に従事。2020年4月からは、コーチングを通じて起業家や経営者をサポートする株式会社コーチェットにジョインし、トレーナー兼コーチとして活動。2021年4月からは軽井沢風越学園に参画し、5年ぶりに学校に戻って教育に関わっている。その他、複業として、プロコーチとしての業務、研修・WS設計、ファシリテーション業務、キャリア教育、教員の伴走支援などさまざまな活動を行っている。
米国CTI認定プロフェッショナル コーアクティブ・コーチ / LEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎ メソッドファシリテーター

この連載では、支援者・伴走者として学び手に関わる方々が、学び手の主体的・対話的な学びを加速させるために有効な、コーチング的な関わりやファシリテーションスキルを紹介させていただいています。

(※ 本連載で「コーチング」ではなく「コーチング的な関わり」という表現を使っているのは、私が教育現場においてコーチングのスキルや考え方・マインドセットなどが活用できると考えている一方、子どもたちに対して教育現場の中で行うその関わりは、あくまで純粋な「コーチング」ではないと線を引くためです。)

第8回となる今回も、第2回・4回・5回・6回・7回目に引き続き、支援者・伴走者として学び手に関わっていらっしゃる皆さまが、現場で活かせるコーチングの考え方やスキルについて、お伝えします。

(※ なお、本連載においては、コーチングやファシリテーションの定義や方法論に固執するのではなく、紹介させていただくポイントを参照、実践いただきながら、学びの伴走者として皆様ご自身にとってのコーチングやファシリーテーションの可能性を模索していただければうれしく思います)

今回取り上げたいコーチングのスキルは「フィードバック」「提案・要望」のスキルです。

以前、ある教育委員会からご依頼いただいたコーチングに関する研修で「コーチングでは、フィードバックや提案、要望を行うこともある」とお伝えすると「コーチングは、基本的に教える(こちらが知っていたり考えていたりする正解を一方的に相手に伝える)ことはしないという認識なのですが、フィードバックや提案、要望をするのはOKなのですか?」と質問をいただいたことがあります。

確かに、コーチングでは基本的に相手に答えを教えることはしません。一方で、「フィードバック」「提案・要望」と聞くと、上記の方のように、教えることを連想する方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、コーチングで行うフィードバックや提案・要望は、決して教える(こちらが知っていたり考えていたりする正解を一方的に相手に伝える)ことを目的としたコミュニケーションではありません。それはあくまで、本人が自分の望む理想の状態や正解に向けて、自分自身で考え自己選択・自己決定していくことをサポートするスキルになります。

そんな「フィードバック」や「提案・要望」も、これまでこの連載で紹介してきた他のコーチングスキルと同様に、支援者・伴走者として学び手に関わる皆さまがスキルとして必要な場面で扱えることが、学び手の主体的・対話的な学びを加速させることにつながると考えていますので、以下で触れていきたいと思います。


(1) フィードバック

コーチングにおいて、相手が目指す目標や成長に対して、今どんな状態にあるかを第三者の視点で伝えることを「フィードバック」といいます。客観的な視点を通して自分の現状を知ることは、新たな気づきにつながったり、自分にとって望ましい方向へ行動していく上での的確な現状把握や原動力になったりします。

そんなフィードバックには、「相手の状況を客観的事実として伝えるフィードバック」と、「相手の言動からこちらが感じる主観的事実を伝えるフィードバック」があります。

前者を活用したコミュニケーションは、例えば「前回話したときは興味がある分野で5人の専門家にインタビューをしたいと言っていたけど、さっき現状は2人だと言っていたね。何が起きているんだろう?」「今学期は留学に向けて英語を頑張りたいと言っていたけれど、最近学校では英語に取り組んでいる様子を見ないね。今、どんな感じなのだろう?」などが当てはまるでしょう。

一方後者を活用したコミュニケーションは、「最近、とても苦しそうに感じるよ。現状を聞かせてもらえる?」「分からないところはないと言っているけど、何か悩んでいるようにも感じるよ。どうだろう?」などが当てはまります。

コーチング的な関わりとして伴走をしている相手に対し、上記のようなフィードバックを使ったコミュニケーションを行う上で特に気をつけたいポイントは、フィードバックが指摘や忠告、命令にならないこと、そしてフィードバックを強要することはできず、受け入れるかどうかは受け手の選択であるということです。

連載第6回「教育現場で活かせるコーチングの考え方について「質問(問いかけ)」編」の中でもお伝えした、” コーチングでは何よりも「答えは相手の中にある」というマインドセットを大切に関わる ”という部分と、つながってきます。

フィードバックをする際に「ちょっと感じていることがあるんだけど、今伝えてもいいかな?」などと前置きをすると、より丁寧でしょう。


(2) 提案・要望

コーチングにおける「提案・要望」は、相手が無意識のうちに行動や思考につくっている「枠」を外し、相手が目指す目標や成長を飛躍的にサポートできる可能性があります。

「提案・要望」を活用したコミュニケーションは、具体的には「まずは自分で調べてみると言っていたけど、提案してもいい?以前学校にゲストティーチャーで来てくれた専門家の方に、zoomでインタビューをしてみるというのはどうかな?」「ここからのチャレンジとして、毎日20分興味がある分野について読書をすると言っていたけど、〇〇さんならもっと読めると感じているんだよね。こちらの要望としては、毎日60分読んでみてほしいな。どうだろう?」「あえてかなりハードルが高い要望を伝えてみるけど、三人で一緒にするんじゃなくて、一人で皆の前でアウトプットしてみない?」のようなものがあります。

フィードバックのスキルでもフィードバックが指摘や忠告、命令にならないことが大切だとお伝えしましたが、「提案・要望」も受け入れるかどうかはあくまで受け手の選択であるため、それが指示や命令にならないように気をつける必要があります。

そのためには「提案したいことがあるのだけれど、伝えていい?受け取るか受け取らないか、もしくは違うチャレンジをするかどうかは、あなたが決めてね」などと伝えた上で「提案・要望」を行うと、学び手や関わる相手の主体性や、自己選択・自己決定を大切にすることができるでしょう。

今回の内容は、いかがでしたでしょうか。

大変ありがたいことに、最近教師教育に関わる皆さまや、人材開発に関わる皆さま、部下育成に関わる皆さまなどにコーチングに関する研修を依頼いただく機会が多くあります。そんな研修でもお伝えしていることですが、私がここで書いていることは決して子どもたちに対してのみ生かせるスキルや考え方ではありません。ぜひ、皆さまが伴奏者として関わっていらっしゃる相手に置き換えて、どう活用できるか考えてみてください。

本記事の内容が、変化が激しく未来が見通しにくい今の時代に伴走者として学び手に関わる皆さまにとって、学び手のより良い成長・変容に関わる際の一助となっていれば幸いです。

連載内容について何かご質問等ございましたら、いつでもTwitter(@1130kimura)のDMにてご連絡くださいませ。

参考資料:『コーチング・バイブル(第4版)―人の潜在力を引き出す協働的コミュニケーション』『新版 コーチングの基本』