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全国どこにいてもICTの実践例にアクセスできるYouTube番組「iTeachers TV」 “仲間がここにいる”と感じられるコミュニティを目指して

全国どこにいてもICTの実践例にアクセスできるYouTube番組「iTeachers TV」 “仲間がここにいる”と感じられるコミュニティを目指して

2019年12月に文部科学省が打ち出したGIGAスクール構想に加え、2020年猛威を振った新型コロナウイルスの影響により、教育現場ではICTの環境整備が急務となっている。

しかし、まだ多くの学校でICT機器をうまく活用できていないのが現状ではないだろうか。

実際2018年に行われたPISAのICT活用調査によると、日本の教育におけるICT活用状況はOECD加盟国の中でも最下位という結果が出ている。

世界的に見ても、日本の教育におけるICT活用は遅れをとっているのが明らかだ。

そのような中で、教育ICTを通じて新しい学びを提案する教育者チーム「iTeachers」を立ち上げ、教育ICTの実践や取り組みを発信するYouTube番組「iTeachersTV」をプロデュースされているのが小池幸司さんである。

教育におけるICT活用の意義を感じ、民間の立場から教育業界へ長年アプローチしてこられた小池さんに、学校教育でのICT活用のポイントについて伺った。

写真:小池 幸司(こいけ こうじ)
小池 幸司(こいけ こうじ)
教育ICTコンサルタント
NPO法人 iTeachers Academy 理事

2011年3⽉、他の学習塾に先駆けてiPad導⼊を実現。教育現場におけるICTの導⼊・活⽤を推進すべく、講演や執筆活動を通じて⾃社のiPad導⼊事例やノウハウを発信している。2015年4⽉にはYouTubeチャンネル「iTeachers TV」をプロデュース。番組MCを務める。著書に「iPad教育活⽤7つの秘訣」「iPad教育活⽤ 7つの秘訣2」


「仲間がここにいる」と感じられるコミュニティを目指して

——小池さん自身がICTを教育に活用していくことが必要だと思ったのは、いつ頃どんなきっかけからだったのでしょうか?

私の本業は学習塾の運営なのですが、東日本大震災のタイミングで塾にiPadを導入したんです。ガラケーからiPhoneに、そして2010年にiPadが発売され、実際に自分で購入して検証する中で、時代の変化を肌で感じました。



また、塾も学校もこれまでの知識中心の学びから、生徒が自分自身で学んでいく学習スタイルにシフトしていこうという考えが打ち出された時期でした。

そこで生徒が主体的に学ぶために、塾にiPadを使うコースを新設してみたんです。

実際に導入してみたら生徒の反応がすごく良くて、これからはこんな風にICTを活用して学んでいく時代なんだと痛感しました。

教育が大きく変わるきっかけになる、とも感じましたね。


——本業である塾運営の傍ら、iTeachersを発足されたのもICT教育の可能性を感じられたからでしょうか?

2010年のiPad発売の後、情報収集のために多くのイベントに参加するようになっていました。

しかし、iPadを活用した教育の本がなくて、セミナーで知り合った先生たちと本を作ろうという流れになりでき上がったのが、「iPad教育活⽤7つの秘訣」でした。

そして出版記念を祝う打ち上げの場で「せっかく集まったのだから、これからもチームとして活動していきませんか」と私から声をかけて、2013年3月15日に9人のメンバーで発足したのがiTeachersです。

今でもこの日のことを「15の夜」と呼んでいます(笑)。

翌月には銀座のアップルストアで初めてイベントも開催し、正式に「iTeachers」として活動をスタートさせました。



——その当時から、小池さんのように教育にICTを活用したいという熱い思いを持った方がいらっしゃったんですね。

そうですね、銀座のアップルストアで初めて開催したイベントも、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。

多くの先生がICTに関する情報を求めているんだなと感じましたね。

iTeachersのメンバーになった先生方もそうなんですが、当時も今も最先端でICTを活用しようと動いている先生方って、在籍する学校の中では浮いた存在だったりするんですよね。

ですので、改めてここに来て多くの実践を共有していく中で、「自分たちがやっていることは決して間違いではない」ということ、「多くの仲間がここにいる」ということを感じてもらいながら、灯が消えないようなコミュニティを作っていきたいという思いが強くなりました。



手術室に世界で初めてiPadを持ち込んだ医師として有名な杉本真樹先生が登壇されたイベントで、「医療はICTを活用して変わったが、教育は変わらなくていいのか」という問いかけをされたことも、自分は何ができるかを考え、動き出すきっかけとなりました。


全国どこにいてもICTの実践例にアクセスできる「iTeachers TV」

——iTeachers発足後は、どのような活動をされてこられたのでしょうか?

とにかくICTを活用した事例を知りたいという先生が多かったので、あちこちの地域を回ってイベントを行っていました。

また、2013年4月以来、年に一度カンファレンスも行ってきましたね。

2020年は新型コロナウイルスの影響で、初めて開催を断念しました。オンラインでのセミナーも考えたのですが、やはりカンファレンスはリアルな場でやりたいという思いがあり、中止する選択をしました。

そして2015年からはYouTubeにて「iTeachers TV」を配信しています。



——ICTの実践例を発信するYouTube番組「iTeachers TV」は、先生方に参考になる内容ばかりで、多くの先生に見ていただきたいです。

そもそも「iTeachers TV」は、イベントで各地を回る中でもっと多くの先生にICTの実践を発表してもらえる場を作りたいと思ったことが始めたきっかけです。

アウトプットすることが一番の学びになりますし、多くの先生方の実践を、失敗も含めて共有してもらえるとすごく共感できる場になると思ったのです。

また、リアルなイベントだと参加人数にも限りがあるし、地方にいる先生方には大きな負担になってしまいます。

こういう番組を作れば、全国どこにいてもICTに関心のある先生が参加することができると思いました。



2015年4月から始めて、毎週水曜日に必ず番組をあげるようにしており、2020年7月1日までに235回の配信をしてきています。

定期的にスペシャル企画も制作しているので、それを合わせると250を超える配信となっていますね。2020年7月現在でチャンネル登録者数は3,000くらい。

全国の学校の先生の数を考えると、そこまでの登録者数を誇る教育系のYouTubeチャンネルは珍しいですし、これほどの長寿チャンネルもなかなかないと思いますね。

私自身、いつも撮影が楽しくて仕方ないんです。



今、少し寂しいなと思うのは公立学校の事例が少ないことです。

特に小学校や中学校は難しいようですね。イベントの協賛のような形で文科省の後援をもらえると、より公立の先生も出演しやすくなるのかなと考えています。


ICT導入に何よりも大切なのは、教員のマインドセット

——iTeachersでの活動は、2020年で8年目に入っています。小池さんには、教育現場のICT活用の現状はどう見えていますか?

iTeachersを始めて情報感度の高い先生方が集まる中で、まず動き出したのは首都圏の私立学校の先生たちでした。

成功例が少ない中でも、実践された先生たちが数々のノウハウを発信し、まずは私立学校でiPadを導入する学校が増えたように感じています。

そこでまた情報発信をする学校が増えて失敗例も減り、都内の私立学校ではむしろiPadを活用していないのはまずいという雰囲気ができ上がってきました。

一方で広がっていったのが、公立学校との差です。

自治体によっては力を入れてICT活用に取り組む地域や、力のある先生たちが教育ICTを進める動きを始めた学校も出てきたのですが、担当者が変わったり、先生が異動となったりした途端に状況が一変し、またイチからのスタートとなるようなケースがよく見られます。

ただGIGAスクール構想が発表されて、いよいよ公立にも予算がついて私立に足並みをそろえられるようになるのではないかと期待しているところです。



——現在、GIGAスクール構想や新型コロナウイルスの影響で、教育現場はICTに目を向けざるを得なくなっています。そんな中、ICTを導入させることが目的となり、どう使っていくかの議論がなされないことが心配です。教育現場にICTを導入し使用していく中で、見失ってはいけない大事なポイントは何でしょうか?

先生たちに一番理解していただきたいのは、生徒を管理しようとする今の体制のままICTを使っても、全くうまくいかないということです。

先生は学びを仕切る人で、生徒は何も知らない人。先生が教えてあげるから、生徒の皆さんは静かにして聞いていなさい、という今までの授業スタイルから、先生がマインドセットしないといけない。

先生は生徒と一緒に学び、ときには生徒から教えてもらうことがあってもいいじゃない、という感覚をまず持てるかどうかが大切です。

今までの感覚のままICTを使おうとすると、多分ICT機器は邪魔なものでしかなくなります。

教員がマインドセットして、新しい感覚を持ってICTに臨む姿勢が何より大切です。


——では最後に、今後のiTeachersでの活動のビジョンを教えてください



2017年の夏、iTeachersのメンバーが理事となって「NPO法人 iTeachers Academy」を立ち上げました。

このiTeachers Academyは、これからの教育を担う教員志望者や教員のために、ICT活用をベースとした新しい学びを実現する力を養成する場作りを目的としています。

どうしても今の教員養成の仕組みは昔から変わることはなくて、先生の卵たちの学びの中にICTという観点がほぼないのが現状です。

そうして今までのやり方のままの先生たちがどんどん現場に出てくる現状に、危機感を持っています。

iTeachers Academyを通じて、ICTをベースとした授業を行う意識を持った先生を世の中に増やしていきたいと思っています。

\ お知らせ /

小池さんがプロデュースする新たなYouTube番組「Teacher’s[Shift]〜新たな学びと先生の働き方改革〜」がスタート!

詳しくは、番組紹介動画をご覧ください↓↓↓