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つながることから始まる、先生アップデート!生徒も先生もワクワクする授業をつくるために、私が大事にしていること

つながることから始まる、先生アップデート!生徒も先生もワクワクする授業をつくるために、私が大事にしていること

魅力的な授業とは、どのようなものでしょうか?
私が考える魅力的な授業とは、「生徒が授業内容に集中し、ワクワクして時間を忘れるような授業」です。

どうしたらそのような授業を作れるのか?これまで私もずっと探ってきました。
そのヒントは、人との出逢いにありました。

教科書をそのまま教えてもおもしろくない!教科書を通じて「何を伝えたいのか?」「何を経験させたいのか?」に重点を置いて授業を計画したり、ときには教科書に基づいてプロジェクトを立ち上げることもあります。

大きなプロジェクトになってくると、これまでにつながった方の中で協力していただける方を募り、生徒にとってよりリアリティのある授業に仕上げていきます。

このような授業づくりは、自分1人でやっていても仕方ありません。授業に関わってくれる学年や教科の先生みんなで試行錯誤することが大切です。職員室の中でつながることで、さらに職員室の外とのつながりが広がるからです。

本文では、私がどのように自分自身の授業をアップデートしていったのかについてお話したいと思います。

写真:山城 永倫美(やましろ えりみ)さん
山城 永倫美(やましろ えりみ)さん
枚方市教育委員会事務局 学校教育部 学校教育室 教育研修課 主幹/元大阪府公立中学校 教諭

大学卒業後、私立高校、公立中学校にて勤務。専門教科は英語。
「人とのつながり」「教材とのつながり」「授業のつながり」など、あらゆる「つながり」を大切にした授業実践を行う。英語の授業を通じて、子どもたちや先生方に自分の経験値をあげるための手助けをしたいと思い、様々なコミュニティを仲間と運営したりしている。モットーは「0勝0敗より12勝14敗」。今年度より教育委員会で研修を担当している。


ワクワクする授業をつくりたい!


「ワクワクする授業をつくりたい!」という思いを胸に、私は日々の授業を考えています。自分がワクワクしなければ、きっと生徒もワクワクしないに違いありません。でも、ワクワクとは、どのように作り出すのだろう?

学生時代に習ったようにしか教えられなかった私は、どうにか自分自身の授業をアップデートしたいと考え、さまざまな研修会に参加してきました。

あるとき、とある大学が主催する英語教員のための講座に参加をしました。そこで出会った教授の授業に、私は衝撃を受けたのです。


例えば「“study”と“learn”の違いはなんでしょうか?」という問いが出されたのですが、その教授は答えを簡単には教えてくれませんでした。

まずは自分の頭をフル回転させて考え、その後近くにいる参加者と自分なりの答えを共有する。それは私にとって、受講者自ら主体的に行動するような授業に感じました。

すぐに答えが出ない課題を提示し、参加者の考えを引き出して対話につなげるといった教授法に刺激を受け、その教授が主催する研修会に本格的に参加することを決意します。これが私の「先生アップデート」の始まりでした。

1年間連続で開講されていたそのセミナーが終わると、次はその研究会でつながった方から「関西英語授業研究会Harvest(前泉州英語授業研究会Harvest)」が主催するイベントに招待していただきました。「とりあえず行ってみるか」という軽い気持ちで参加したそのイベントのことは、今でも鮮明に覚えています。

講義ではなくワークショップ形式のイベントで、登壇者が一方的に話すだけではなく、参加者と双方向のやりとりがありました。登壇者が話を終えると、今度は参加者同士でのディスカッション。参加者の職種や校種がバラバラになるようなグループが構成されており、多様な方とつながることができました。

イベントに参加しているうちに、先生だけでなく、さまざまな分野の専門家ともつながることができました。自分とは異なる分野について研究されている方のお話は、聞いているだけでもワクワクします。

話を重ねるうちに、メンバーが挑戦していることや大事にしている価値観についての対話が始まります。私にとっては、まるで「大人のたまり場」のように感じていました。


研修後、学校に戻って英語の教科書の教材研究をしているうちに、研修会のメンバーと一緒に授業を作ったらおもしろいのではないかと、出会った人の姿が思い浮かぶようになり、実際につながりの中からゲストをお招きして授業を行いました。

例えば日本のマンガ・アニメについて英語で学ぶ単元では、海外の学校ではアニメやマンガがどのように扱われているのかについて、外国につながりのある方から実際にお話を聞きました。このように、さまざまなつながりによって、教科書だけではできないような授業が実現したのです。


「つながり」は、授業づくりに欠かせないもの


「教科書を学ぶ」のではなく「教科書で学ぶ」ことを大事にするのが、私のスタンスです。

授業を作るとき私は、「生徒にどういう力をつけたいのか」「どんな経験をして欲しいのか」といった単元の最終ゴールを決めることから始めます。ゴールに向かう過程の中で、「つながり」を活用する場面を組み込んでいきます。

ここ数年間は、教科書をベースにしながら、基本的にはどの単元でも何らかの形で外部とつなげた授業に挑戦してきました。ここからは、私が実践した授業の具体例を紹介します。


実践例】 海外の学校のニーズに合わせて、日本への修学旅行プランを提案しよう!


私が使用している英語の教科書内には、プロジェクト的な学習に取り組むページがあります。

その中に「海外の生徒にアンケートをとり、その結果を基に、それぞれのニーズに合わせた修学旅行プランを作る」という、架空のプロジェクトがあります。しかし、架空の学校に対する修学旅行プランを作っても、いまいちリアルな感じが出ません。


そこでSNSを活用してアンケートに協力してもらえる海外の学校を実際に募り、実際にアンケートを実施。タイ、スリランカ、フランス、エジプトなどの先生と生徒たちが協力してくれました。

日本に修学旅行に来ることを想定して、日本を訪れるとしたら「何を食べたいか」「どこに行きたいか」「何をしたいか(文化的な活動)」の3つについて調査を実施。その結果を見て生徒たちは、旅行会社の新入社員になり切って、チームに分かれてそれぞれのニーズに合う3泊4日の旅行を計画することになりました。

単元のゴールには、協力してくれた学校の生徒向けに修学旅行のプランを記載した「音声ガイドブック」スライドショー(iPadを使ったため、Keynoteというアプリを使用)で作ることにしました。授業の大まかな流れは以下の通りです。

【授業の流れ】

(1) 授業のスケジュールや、アウトプット方法、評価項目などを提示
(2) 相手校からのアンケートを読み取り、それぞれのニーズを把握
(3) アイデアを出し合い、ガイドブックのアウトラインを作成
(4) スライドショーの制作
(5) 音声を録音をして、スライドショーに差し込み、音声ガイドブックが完成


このような単元の流れにすることで、英語で大切な「話す」「読む」「聞く」「書く」の4つ技能を使う必然性を出すことができました。

このような授業を、学年8つの全クラスで実施できたのは、一緒にチームを組んでいる先生の協力があったからこそだと思っています。

その他にも、教科書のテーマが「インド」であれば、インドにルーツのある方からお話を聞いたり、「原爆」がテーマであれば広島原爆記念資料館とつないだり、資料や映像をお借りして「ミニ資料館」を学校内に設置したりしました。


私が「つながり」を通じて作り出したいのは、学習のリアル感です。本物やリアルな情報に触れることで、今は興味が沸かない情報や内容だったとしても、いつかどこかで生きてくる、記憶に残っていつか役に立つはずだという確信があり、リアリティのある授業づくりにチャレンジし続けています。


仲間のアイデアによって、プロジェクトはグッと深まる


初めのうち、これまでお伝えしてきたようなプロジェクトは、自分の担当する学級だけで実施していました。しかし本来は学年全体で行うべきだと考えていたため、だんだんと同じ学年の英語担当に共有していきました。ありがたいことに同僚たちはフットワークが軽く、すぐに理解を示してくれ、一緒にプロジェクトを実施することができました。

同僚と一緒に授業を作るときも必ず、授業の目標や目的の共有からスタートします。それから「最終ゴールは何をすべきか」「どんなプロジェクトを実施できそうか」を考えていきます。どの先生にも授業づくりに対する熱い思いがあるので、それぞれの意見も共有し合うことも大事にしました。

プロジェクトを重ねていくうちに、自然とメンバー同士の役割分担が行われるようになりました。誰かがプランの提案をしたら、他のメンバーが資料を作る役、生徒へ授業について発信する役、外部との連絡役、課題やテストを作る役と、分担が決まっていきます。単元が終わった後には、必ずみんなで振り返りを行うことも欠かせません。

初めは主に私が単元のゴールやプロジェクトを提案していたのですが、最近は他の先生からも「次のゴールどうしましょう?」「次はどのようなプロジェクトを実施しますか?」などという提案をしてくれることも増えました。私1人では考えつかない多くの良いアイデアを仲間が提案してくれることもあり、確実に周りの先生方のアップデートにつながっていると感じています。


先生アップデートは、つながることから始まる


私はある1つの研修をきっかけにして、これまで多くの方とつながり、たくさんの刺激を受けてきました。悩みがあれば相談に乗っていただくこともありました。そのおかげで今の私があります。つながってくださった方には感謝しかありません。

私たち自身が「チャレンジしたい」と思えば、必ずチャンスは訪れてきます。先生たちには、身近な仲間とつながったり、学校外の魅力的な人たちにも出会ってほしいと私は強く思っています。つながることがきっかけとなって授業が魅力的になり、きっと周りの人たちをハッピーにすると信じています。

前任校で私は、学校内の先生方がプロジェクトに取り組めるようにコーディネートする役割を担っていました。また、総合的な学習の時間にお招きする外部講師と教員が出会う場を整えたりもしました。外部の活動では、初めに紹介したHarvestの監事をしたり、「先生シェアハウス」という活動のプロジェクトメンバーをするなど、つながりの中でさまざまな挑戦をしています。

これら全てのつながりによって、確実に自分自身がアップデートされたという感覚があります。そしてそのつながりによって、先生同士の関係や、生徒と先生との関係も変化したと思っています。

みなさんも、ぜひ興味のある分野に飛び込んで「つながり」を作ってみてはいかがでしょうか?