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“見えない違い”に目を向けることが、DEIの出発点。学校は、安心して異文化感受性を安心して育む練習ができる場所

“見えない違い”に目を向けることが、DEIの出発点。学校は、安心して異文化感受性を安心して育む練習ができる場所

教育分野においても「DEI(多様性・公正・包摂)」という言葉を耳にする機会が増える一方で、学校現場ではどう受け止め、どう実践すればよいのか迷う声も少なくない。“違い”を「困りごと」ではなく「可能性」として捉えるためには、どんな意識が必要なのか。

異文化に対する理解や感受性を高める「異文化感受性発達」の研究と実践に長年取り組んできた、立命館大学グローバル教養学部教授の堀江未来さんは、「相手の“見えない部分”にこそ目を向ける意識が大切だ」と語る。

現在、立命館大学先進研究アカデミー「RARA」のアソシエイトフェロー(研究者)として「DEI教育」について研究する堀江さんに、じっくり話を聞いた。

写真:堀江 未来(ほりえ みき)さん
堀江 未来(ほりえ みき)さん
立命館大学 グローバル教養学部 教授

名古屋大学大学院教育学研究科博士前期課程修了、ミネソタ大学(アメリカ)博士課程修了、Ph.D.(教育政策行政学)取得。学部時代の中国留学を契機に、異文化体験を通した成長メカニズムの探究を始める。学位取得後、南山大学、名古屋大学を経て2009年立命館大学国際教育推進機構に着任。2017年から7年間附属校校長を兼任し、多様な児童生徒の成長の姿に接しながら、初等中等教育におけるDEI推進に努めた。BRIDGE Institute代表。


相手の見えない部分にこそ目を向ける


私自身、大学入学と同時にたくさんの留学生と出会う機会があり、そこが私にとって初めての異文化との出会いでした。当時はバブル期。物価の高い日本に、ナイジェリアや中国、ミャンマーなど多様な国の学生が、母国の未来を思い、強い覚悟と情熱を持って学びに来ていました。必死に学ぼうとしている彼らの姿にとても圧倒され、心を揺さぶられたんです。

その流れで、私も中国・南京大学に1年間交換留学することになり、現地での生活を通して「目に見えることが全てではない」という異文化の奥深さに触れることになりました

同時に、日本にいた頃は抑えていた自分の素の部分、例えば率直なもの言いや、自分の意思をはっきり示す姿勢を、現地では自然に出すことができたんです。「世界には、自分が自分らしくいていい場所が必ずあるんだ」と感じた経験は、私にとって大きな救いでした。そんな体験をした後に帰国すると、今度は逆に日本に馴染めなくなってしまったのですが…。

異文化に過適応した後、日本で強い不適応を経験した私を見て「おもしろい経験してるね」と声を掛けてくれたのが、異文化コミュニケーション論を専門にされていた先生でした。ここが、私の研究者としての出発点です。

文化の狭間に立った経験がある人は、どちらの文化にも寄り添える視点を持てるようになる。だからこそ見えるものがあり、果たせる役割がある。私自身、そうした経験に教育的意義を感じて、大学教員として大学生を対象に異文化間教育の実践を積み重ねてきました。

2017年から2024年までの7年間は、附属校の校長という立場から、より幅広い年代の子どもたちとも関わるようになり、異文化間教育の理論的枠組みをDEI教育というより広い文脈に照らし合わせて展開したいと考えるようになりました。


「自分には見えていないことがある」という意識


勇気を出して、“見えない部分”にアクセスしよう